AIプロダクトのリード獲得を考えるとき、広告、展示会、ウェビナー、パートナー開拓と選択肢だけは並ぶものの、どれから手を付けるべきか判断がつかないというケースは多いのではないでしょうか。判断材料になるのは他社の実例ですが、各社の施策はプレスリリースや決算資料に散らばっていて、全体の型が見えにくいのが実情です。一般社団法人日本AI導入支援協会の調査(2026年7月)は、上場AI企業のリード獲得施策を一次資料で収集しており、そこからチャネル選びの構造を読み取ることができます。
AIプロダクトのリード獲得チャネルは、上場AI企業の施策を並べると4系統に整理できます。パートナーの販売網や提携先の信頼に接続する「提携チャネル型」、自社イベントに意思決定者を集める「自社イベント型」、買い手が集まる外部の場に立つ「展示会出展型」、導入事例と調査データを公開する「実績公開型」です。そしてこの4系統は横並びの選択肢ではなく、積み上げる順番があります。後発が最初に打てるのは、導入事例を武器にして展示会や共催の場に立つこと。提携チャネルに進むのは商材の再現性が出てからで、自社イベントは顧客基盤の蓄積が生む最終形です。そして、その導入事例がまだなく予算も限られる立ち上げ期の入口には、媒体費のかからないSEO・LLMO(検索とAIの回答面の獲得)を置きます。
AIを活用したBtoBマーケティングの戦略設計から実行までを担当。検索流入を軸にした集客と、AIXの現場知見をもとに記事を監修しています。
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AIプロダクトのリード獲得チャネルは4系統に分かれる
調査では、上場AI企業がリード獲得のために実施した施策を、プレスリリース、決算説明資料、有価証券報告書といった一次資料で1件ずつ確認しています。個々の施策は展示会出展からタクシーCMまでばらばらに見えますが、「誰の信頼を使って見込み客に届くか」という軸で並べ直すと、構造は4つに集約されます。

他者が持つ顧客接点と信頼に乗るのが提携チャネル型、自社の場に意思決定者を呼び込むのが自社イベント型、買い手が既に集まっている場へ自分から立ちに行くのが展示会出展型、顧客の実績と調査データを公開して信頼を先に渡すのが実績公開型です。この外側に5つ目として広告でリードを買う経路がありますが、AIが本業の上場企業では広告宣伝費が費目に挙がらない会社が多数派で、その相場と使いどころは「AI企業の広告費はいくら?AIが本業の上場27社調査から見るマーケ予算の置き方」で扱いました。本記事はその続きとして、広告の外にある4系統を施策レベルで解剖します。
提携チャネル型: パートナーの販売網が業務AIの市場到達を決める
4系統の中で、業務系AIの受注構造を最も大きく規定しているのがこの型です。AI-OCRのAI insideは契約の90%をパートナー経由と説明しており、業務AIでは販売・導入網が市場到達の中核になり得ることを示しています。同社が2023年にダイワボウ情報システムとの提携を発表した際には、約19,000社の販売店ネットワークが記載されていました。自社の営業人員では到達できない全国の分散市場に、既存のIT流通網への接続で届く設計です。
提携の相手は販売店に限りません。GVA TECHはGoogleのAI Overviewが検索流入へ与える影響を説明し、司法書士など専門家との提携へ獲得チャネルを多様化しています。AVILENはベルシステム24との共同事業で、AI開発力に大規模な顧客対応・運用基盤を組み合わせました。エクサウィザーズは地域金融機関や中小企業団体と共催セミナーを重ね、相手の信頼と集客基盤を使って生成AIの教育から導入検討へつなげています。この共催セミナーの参加者調査(有効回答55件)では、生成AIの個人利用84%に対し会社としての導入は約58%が未着手で、教育型の施策が刺さる需要の厚みも確認されています。
参考までに、提携の受け皿そのものが制度化される動きもあります。ソフトバンクのAI Foundation for Startupsは、スタートアップの技術を同社の顧客ネットワークと営業チャネルへ接続する仕組みで、小規模なAI企業にとっては大手と広告で競うより、大手のチャネルに載る設計を早期に持つ方が合う市場があることを示しています。
自社イベント型: 意思決定者との接点を蓄積する
エンタープライズ向けのAI企業が力を入れているのが、自社の場に意思決定者を集約する型です。PKSHA Technologyが開催したPKSHA AI Summit 2025には452人が参加し、会社アンケートでは参加者の約90%がAIエージェントの重要性を認識したとされています。FRONTEOのAI Innovation Forum 2025は3日間・22セッションで829人を集め、開催は7年目に入りました。エクサウィザーズのexaBase生成AIユーザー会は25回を数え、顧客自身が業務時間削減などの活用成果を登壇して共有しています。
この型の狙いは大量のリードではなく、稟議を動かせる層との濃い接点です。広告のクリックと違い、意思決定者が半日を投じて参加するイベントは、それ自体が検討度の高さの証明になります。AVILENの3回連続ウェビナーのように、段階的な学習テーマで接点を継続するナーチャリング型もここに含まれます。参考として対象外の大手でも、プレイドのX DIVEが製品名ではなく顧客体験と企業変革を主題にCxO層を集め、トレンドマイクロが「プロアクティブセキュリティ」というカテゴリー語を自社イベントで反復するなど、この型は製品説明ではなく経営の論点を主語にする点で共通しています。
ただし、後発がこの数字だけを見て自社カンファレンスから入るのは順番が違います。FRONTEOの7年目、エクサウィザーズの25回という回数が示す通り、自社の場に人を集める力は顧客基盤と発信の蓄積が生むものです。この点は後述の打ち手の順番で扱います。
展示会出展型: 接点のない後発でも意思決定者に会える
自社に集客力がない段階で意思決定者に会う経路が、買い手の集まる外部の場に立つ型です。SapeetはDX総合EXPO 2026春にAIロープレを出展し、来場者が実際に体験できるデモと顧客事例を組み合わせました。このイベントの来場者は16,000人超、うち管理職・経営層が49%(主催者発表)で、会社は多数のアポイント獲得を報告しています。出展費はかかるものの、来場者の母数と意思決定者の比率が主催者側で担保されている点が、この型の価値です。
立ち方にも型があります。AVILENは展示会ブースに経営者講演を組み合わせ、AI導入の上流課題から相談案件への接点を作っています。FRONTEOは展示会で市場別の入口を作り、自社フォーラムで深掘りする二段構えです。共通するのは、製品説明を並べるのではなく、体験デモ、顧客事例、経営論点といった「素通りされない武器」を持って立っていることです。
実績公開型: 導入事例はリード獲得の全系統で武器になる
4つ目が、顧客の実績と調査データを公開して信頼を先に渡す型です。象徴的なのがユーザーローカルのタクシーCMで、京都府の約8,000職員でChatAIを展開する事例をクリエイティブの中心に置き、第2弾では企業事例をタクシー、エレベーター、オフィスサイネージへ横展開しました。紹介された事例では、週1回以上の利用者は年66時間の削減、年間約12,000件のAI議事録作成といった数値が示されています。広告面を買ってはいるものの、載せている中身は導入事例そのものです。汎用的なAIの便利さではなく、導入規模と削減時間でBtoBの需要を具体化する設計だと言えます。
PKSHA TechnologyがAIエージェント製品を発表した際も、先に提示したのは時価総額上位100社の70%超で自社の製品・ソリューションが稼働しているという導入基盤でした。参考として対象外の企業でも、SREホールディングスが大手不動産企業での年間約1,200時間の業務削減事例を公開し、トレンドマイクロが法人組織の81%がAI活用ツールを利用しているという調査を発信するなど、実績と統計の公開はAI関連の各市場で需要創出の中心にあります。

ここで気づくのは、実績公開が独立した型であると同時に、他の3系統の武器でもあることです。展示会のデモに添える顧客事例、自社イベントで顧客が登壇して語る成果、パートナーが見込み客へ持ち込む販売資料。どの型を選んでも、最後に相手を動かすのは顧客の実績数値です。チャネルの議論は「どこに出るか」に寄りがちですが、各社の施策を並べる限り、成果を分けているのは「何を見せるか」の方だと考えられます。
後発の初手は「導入事例を武器に、展示会へ出る」

4系統を後発の打ち手に引き付けると、順番はこう整理できます。初手は実績公開と展示会出展の組み合わせです。最初の顧客の成果を、業務名と削減時間のような具体的な数値で公開できる形に整え、それを武器にして展示会や共催セミナーといった外部の場に立つ。この2つは自社の集客力がゼロでも始められ、意思決定者との接点が場の側で担保されています。
提携チャネルに進むのは、誰が売っても導入まで運べる型ができてからが本番です。パートナーは売りやすい商材から扱う傾向があるため、導入手順や支援体制が定型化されていない段階で販売網だけを広げても稼働しにくいと見られます。そして自社イベントは、顧客基盤と発信の蓄積が生む最終形であり、最初から狙う型ではありません。なお、ウェブ完結で契約まで進むセルフサーブ型の商材であれば、この階段より広告でリードを買う比重が上がります。その場合の予算水準は前掲の広告費調査を、商材の型そのものの設計は「AI研修の価格はどう決める?主要15社の価格戦略4類型から見る後発の差別化」を参照してください。
導入事例がまだない初期のリード獲得はSEO・LLMOから始める
それでは、導入事例がまだ1件もなく、広告や出展に割ける予算も限られている立ち上げ期はどうするか。この段階で最も入りやすいのが、検索とAIチャットの回答面を取りにいくSEO・LLMOです。理由は3つあります。かかる費用が媒体費ではなくコンテンツ制作の手間であること。作った内容が資産として蓄積し、出稿をやめた瞬間に接点が消える広告と違って積み上がり続けること。そして、業務の課題を検索するのは導入を検討している担当者や意思決定者そのものであることです。
加えて、その検索面はいまAIの回答に置き換わりつつあります。買い手の下調べの一部はChatGPTやAIによる検索要約への質問に移っており、AIが回答を組み立てる際に引用する情報源がまだ固まっていない領域も残されています。先行企業が7年かけて積んだフォーラムや、契約の9割を運ぶ販売網を後発がすぐに再現することはできませんが、検索とAIの回答面はコンテンツの質で取れる数少ない面です。この経路で最初の問い合わせと導入事例を作り、事例ができたら展示会へ。予算の限られた初期のリード獲得は、この順番で設計するのが最も無理のない道筋でしょう。
合同会社efuは、AIサービス・AI研修を提供する企業に向けて、この順番でのリード獲得設計(SEO・LLMOによる検索とAIの回答面の獲得、導入事例の作り方と見せ方、出るべき展示会・セミナーの選定)を支援しています。自社のチャネル設計を検討したい方は、お問い合わせよりご相談ください。
根拠データ: 一次資料で確認したリード獲得施策18件(2026年7月調査)
本記事のデータは、一般社団法人日本AI導入支援協会が2026年7月18日時点で実施した上場AI関連60社の調査によるものです(調査: 日本AI導入支援協会、分析: 合同会社efu。当社代表は同協会の代表理事を務めています)。本記事ではこのうちAIを中核事業・中核技術とする9社の施策18件を分析対象とし、既存の事業領域で強みを持つ会社にAIを組み込んだ企業や複合企業の施策は、本文中で参考と明示した上で扱っています。4系統の区分は協会と当社による分析区分です。各施策の数値はいずれも会社公表値で、出展費、商談数、受注額の多くは非開示のため、費用対効果の比較は行っていません。
| 系統 | 会社 | 施策 | 確認できた数値(会社公表) | 時期 |
|---|---|---|---|---|
| 提携チャネル | AI inside | パートナー中心の販売構造 | 契約の90%がパートナー経由 | 会社開示時点 |
| 提携チャネル | AI inside | ダイワボウ情報システムとの販売提携 | 発表時に約19,000社の販売店網(参考履歴) | 2023年 |
| 提携チャネル | GVA TECH | 専門家提携などへのチャネル多様化 | 定量非開示(AI Overviewの影響を説明) | 2025年 |
| 提携チャネル | AVILEN | ベルシステム24との共同事業 | 定量非開示 | 2025年 |
| 提携チャネル | エクサウィザーズ | 地域金融機関・団体との共催セミナー | 満足度4.25/5(有効回答55件) | 2025年 |
| 自社イベント | PKSHA Technology | PKSHA AI Summit 2025 | 参加452人、約90%が重要性を認識(会社アンケート) | 2025年8月 |
| 自社イベント | FRONTEO | AI Innovation Forum 2025 | 3日間・22セッション・829人、開催7年目 | 2025年9月 |
| 自社イベント | エクサウィザーズ | exaBase生成AI ユーザー会 | 開催25回(参加者数非開示) | 2025年 |
| 自社イベント | AVILEN | 生成AIの連続ウェビナー | 3回シリーズ(集客数非開示) | 2025年 |
| 展示会出展 | Sapeet | DX総合EXPO 2026春 出展(AIロープレ体験デモ) | 来場16,000人超・管理職経営層49%(主催者発表) | 2026年2月から3月 |
| 展示会出展 | FRONTEO | AI・人工知能EXPO出展 | 定量非開示 | 2025年4月 |
| 展示会出展 | AVILEN | AI・人工知能EXPO出展(経営者講演) | 定量非開示 | 2025年 |
| 実績公開 | ユーザーローカル | ChatAIタクシーCM(自治体事例) | 約8,000職員で展開する事例を放映 | 2026年4月 |
| 実績公開 | ユーザーローカル | ChatAI第2弾CM(企業事例) | 3種のオフィス系サイネージへ横展開 | 2026年6月 |
| 実績公開 | PKSHA Technology | AI Agents発表時の導入基盤提示 | 時価総額上位100社の70%超で稼働(2025年3月時点) | 2025年4月 |
| 系統外(広告・体制) | GVA TECH | 広告費の選別と大企業向け転換 | 会社広告宣伝費2.1億円(全サービス合計) | 2025年12月期 |
| 系統外(広告・体制) | HEROZ | 新製品立ち上げの体制投資 | 会社広告宣伝費が前期比111.7%増 | 2025年4月期 |
| 系統外(広告・体制) | ユーザーローカル | 会社広告宣伝費の投資水準 | 7.5億円・売上高比16.3% | 2025年6月期 |
系統外の3件は、広告予算と営業体制に関する施策として収集されたものです。広告宣伝費はいずれも会社全体の金額で、個別サービスや個別施策への配賦はできません。
出典一覧(2026年7月18日時点)
- 一般社団法人日本AI導入支援協会「AI関連上場60社 マーケティング戦略調査」(2026年7月)。各施策はプレスリリース、決算説明資料、有価証券報告書(EDINET)等の一次資料で確認
- AI inside 公式サイト(契約の90%がパートナー経由) https://inside.ai/about/sustainability/ 、ダイワボウ情報システムとの提携リリース(2023年) https://inside.ai/en/news/2023/1107_aiinside-dis/
- GVA TECH 公式note(AI Overviewの影響とチャネル多様化) https://note.com/gvatech/n/n0913e716f416
- AVILEN プレスリリース(ベルシステム24共同事業) https://avilen.jp/news/650469/ 、連続ウェビナー https://avilen.jp/news/291307/ 、AI・人工知能EXPO出展 https://avilen.jp/news/328010/
- エクサウィザーズ 導入事例(地域金融機関との共催セミナー) https://exawizards.com/exabase/gpt/case/31865/ 、exaBase生成AIユーザー会 https://event.exawizards.com/misc/2025134
- PKSHA Technology ニュースリリース(PKSHA AI Summit 2025) https://www.pkshatech.com/news/20250828/ 、PKSHA AI Agents発表 https://www.pkshatech.com/news/20250407/
- FRONTEO プレスリリース(AI Innovation Forum 2025) https://www.fronteo.com/news/pr/202509 、AI・人工知能EXPO出展 https://www.fronteo.com/pr/20250319_2
- Sapeet イベントレポート(DX総合EXPO 2026春) https://suite.sapeet.com/roleplay/news/20260311/
- ユーザーローカル プレスリリース(ChatAIタクシーCM) https://www.userlocal.jp/press/20260413ka/ 、第2弾CM https://www.userlocal.jp/press/20260601mm/
- 参考: ソフトバンク(AI Foundation for Startups) https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2025/20250926_01/ 、SREホールディングス(導入事例) https://sre-group.co.jp/news/2025/250610.html 、トレンドマイクロ(AI利用調査) https://www.trendmicro.com/ja_jp/about/newsroom/press-releases/2025/pr-20250723-01.html 、プレイド(X DIVE 2025) https://plaid.co.jp/news/20250527/

