毎月の広告レポートづくりに、どれだけの時間を取られているでしょうか。Google広告、Meta広告、Yahoo!広告と媒体ごとに管理画面へログインし、数値をスプレッドシートに転記し、前月比やCPA、ROASを計算し、グラフを整え、所感を書く。媒体が増えるほど作業は膨らみ、配信を改善するより集計に追われる、という状態になりがちです。
この自動化には専用のSaaSを契約して媒体をつなぐ道もありますが、月額を払い続ける外部ツールに乗らず、自分たちの手元で組む方法も選べるようになりました。AIエージェントにGoogleのサービスアカウントでデータへ直接つなぎ、集計から考察の初稿までをその場で生成させるやり方です。
AIを活用したBtoBマーケティングの戦略設計から実行までを担当。検索流入を軸にした集客と、AIXの現場知見をもとに記事を監修しています。
合同会社efuでは、広告の運用そのものから、成果を判断するためのレポートと指標の設計までを支援しています。記事の内容に関するご質問や、自社での取り組みについてのご相談は、支援内容のページからご連絡ください。
広告レポートの手作業はどこに工数がかかっているのか
自動化の前に、いまの作業のどこに時間が溶けているかを切り分けておくと、何を機械に任せられるかが見えてきます。広告レポート作成の工数は、大きく三つに分かれます。
一つ目はデータの収集です。各媒体の管理画面にログインし、期間を指定してCSVをダウンロードする、あるいは画面の数値を手で書き写す作業で、媒体が複数あるとその数だけ繰り返すことになります。二つ目は加工と集計です。媒体ごとに項目名やデータの形式が違うため、表記を揃え、合算し、前月比やCPA、CPC、ROASといった指標を計算します。三つ目は考察です。数値の増減を読み、なぜ動いたのかを言葉にし、次の打ち手を添えます。

これまで自動化できたのは、一つ目と二つ目、つまり収集と集計まででした。三つ目の考察は人が手で書くしかなく、ここに毎回まとまった時間がかかっていました。これから解説するAIエージェント直結の方法が新しいのは、収集と集計に加えて、この考察の初稿までを一度に生成できる点にあります。
AIエージェントをサービスアカウントで広告データに直結する仕組み
いまAIを前提とするチームで広がっているのが、ChatGPTやClaude、Gemini CLIといったAIに、Googleのサービスアカウントを使ってデータソースへ直接つなぐ方式です。決まったダッシュボードを介さず、「先月と比べてCPAが悪化したキャンペーンを抽出して、改善案も添えて」と話しかけるだけで、AIがその場でデータを取得し、集計から考察までを返します。器を先に作ってから数値を流し込む発想とは逆で、欲しいレポートをそのつど生成させるのが特徴です。
仕組みの土台になるのが、サービスアカウントという仕組みです。これはGoogle Cloud上で発行する、人ではなくプログラム用のアカウントで、これに広告データやGA4への閲覧権限を与え、その認証情報を通じてAIがデータへアクセスします。つなぎ方には、MCPで対話的に問い合わせる方法と、コーディングエージェントに処理そのものを書かせる方法の二つがあります。以下、土台のサービスアカウントを用意してから、それぞれのつなぎ方を順に説明します。
手順1 Google Cloudでプロジェクトとサービスアカウントを用意する
最初に、Google Cloudの管理画面でプロジェクトを作成し、使うAPIを有効にします。GA4のデータを扱うなら、有効にするのは Google Analytics Admin API と Google Analytics Data API の二つです。BigQueryに集約したデータを使うなら BigQuery API を、スプレッドシートを読むなら Google Sheets API を加えます。
次に、サービスアカウントを作成します。管理画面の「IAMと管理」からサービスアカウントを新規作成し、JSON形式の認証キー(鍵ファイル)を発行してダウンロードします。この鍵が、AIがデータにアクセスするための合鍵になります。発行したサービスアカウントにはメールアドレスの形をした識別子が割り当てられるので、それを控えておきます。
最後に、データ側でこのサービスアカウントに権限を渡します。GA4なら管理画面のプロパティのアクセス管理を開き、先ほどのサービスアカウントのアドレスを「閲覧者」として追加します。ここで与える権限は閲覧者にとどめるのが原則で、データを書き換えたり設定を変えたりする権限は渡しません。
手順2A MCPでAIと対話的につなぐ
つなぎ方の一つが、MCP(Model Context Protocol)と呼ばれる、AIと外部データをつなぐための標準的な仕組みを使う方法です。GoogleはGA4向けの公式MCPサーバを提供しており、これをClaudeやGemini CLIに登録すると、GA4のデータへ自然言語で問い合わせられるようになります。
公式のGA4 MCPサーバはPythonで動き、pipxというツールを使えば次の一行で起動できます。
pipx run analytics-mcp
これをClaude Codeに登録するなら、手順1で発行した鍵ファイルのパスとプロジェクトIDを渡して、次のように追加します。
claude mcp add analytics-mcp -e "GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALS=鍵ファイルのパス" -e "GOOGLE_PROJECT_ID=プロジェクトID" -- pipx run analytics-mcp
Gemini CLIの場合は、設定ファイル ~/.gemini/settings.json の mcpServers に同じ内容を書きます。登録できると、AIから run_report(レポート取得)や run_realtime_report(リアルタイム取得)、get_account_summaries(アカウント情報)といったツールが使えるようになり、「直近28日のチャネル別のセッションとコンバージョンを表で」のように頼めば、その場でGA4から引いて返してくれます。公式MCPサーバは読み取り専用で、設定の書き換えはできず、データの閲覧と分析に用途が絞られています。
いちど登録してしまえば、日々の問い合わせは自然言語で済み、運用にコードは要りません。ただし、ここまでのサービスアカウントの作成やAPIの有効化、権限の設定といった土台づくりには、ある程度の知識が必要になります。
手順2B コーディングエージェントに取得処理を書かせる
もう一つが、Claude CodeやOpenAIのCodexのようなコーディングエージェントに、サービスアカウントの鍵を渡し、データを取得・整形する処理そのものを書かせて実行する方法です。MCPが対話的な問い合わせに向くのに対し、こちらは決まったレポートを繰り返し作る自動化に向いています。
たとえば「このサービスアカウントの鍵を使ってGA4のデータAPIから先月のチャネル別実績を取得し、前月比とCPAを計算してスプレッドシートに書き出すスクリプトを作って」と指示すれば、エージェントが必要なライブラリの導入からコードの作成、実行までを進めます。さらに「毎月1日の朝に自動で動くようにして」と続ければ、定期実行の仕組み(パソコンのタスクスケジューラやGoogleのCloud Scheduler、スプレッドシートに組み込めるGoogle Apps Scriptなど)まで組ませられます。いちど用意すれば、毎朝最新のレポートが用意される運用になります。
コーディングエージェントで計測から記事や動画の生成までを内製した具体例は「Claude Code(クロードコード)でマーケティングを内製する、計測から記事・動画自動化までの作り方」で扱っています。
媒体側のAPIは、媒体ごとに手続きが異なります。たとえばGoogle広告のAPIは利用にデベロッパートークンの申請が必要で、GA4より一手間かかります。複数媒体を扱うなら、媒体ごとのAPIを一つずつ直接叩くより、後述のようにいったんBigQueryやスプレッドシートにデータを集約し、エージェントにはそこを読ませる方が、結果的に早く安定します。
手順3 複数媒体はBigQueryやスプレッドシートに集約してから読ませる
Google広告やGA4はGoogle系のため直接つなぎやすい一方、Meta広告やYahoo!広告まで横断するなら、いったんデータを一カ所に集めておくとこの方式に乗せやすくなります。各媒体のデータをBigQueryやスプレッドシートに集約しておけば、AIはその一カ所へ問い合わせるだけで、媒体をまたいだ横断のレポートを作れます。集約の部分は、各媒体のAPIやデータ連携の仕組みで整えておきます。
この集約の形は、特別なものではありません。たとえばスプレッドシートにフォーム経由のリードデータをUTM付きで自動でためつつ、成約や受注金額だけ手で記録し、別タブで集計する、といった管理シートを運用している現場は多いはずです。台帳の設計と運用ルールは「リード管理をスプレッドシートで行う方法、SFA導入前の台帳設計と運用ルール」で整理しています。その集約済みのシートにサービスアカウントで閲覧権限を与えれば、人がシートを開いて読む代わりに、AIに毎月の集計と考察を任せられるようになります。すでにスプレッドシート集約ができているなら、この方式を最短で乗せられる状態にあるということです。
安全に運用するための最小限のルール
便利な一方で、広告データには顧客や売上に関わる数字が含まれます。使い始める前に、いくつかの線引きを決めておくと安心です。サービスアカウントに与える権限は閲覧者の範囲にとどめ、AIにデータの書き換えや設定変更をさせない構成にします。認証キーの鍵ファイルは、ソースコードに直接書き込んだり共有しやすい場所に置いたりせず、アクセスできる人を限って厳重に管理します。そして、どの情報までをAIに渡してよいかを社内で決めておきます。公式のGA4 MCPサーバが読み取り専用に絞られているのも、こうした事故を防ぐための設計です。
AIに任せられるのは考察の初稿まで
この方式の価値は、これまで人が手で書くしかなかった考察の初稿までをAIに任せられる点にあります。数値が動いた理由の要約や、改善のヒントの洗い出しを、数分でたたき台にできます。ただし、AIが返すのはあくまで下書きです。数値が動いた背景にある施策の意図や市況、次にどの媒体へ予算を寄せるかといった最終判断は、引き続き人が担います。AIの考察は事実と異なる解釈を混ぜることがあるため、配布する前に元の数字と突き合わせる確認も欠かせません。
それでも、収集と集計に加えて考察の初稿まで機械に任せられるようになったことで、人が向き合う時間を、検証と意思決定という最も価値の高い部分に寄せられるようになります。集計に追われてレポートを出すだけで精一杯だった状態から、出てきた数字をどう次の配信に生かすかを考える時間を取り戻せる。これが、AIエージェントを使った広告レポート自動化のいちばんの狙いです。
広告だけでなくGA4やSearch Consoleも1つの画面にまとめたい場合は、媒体をまたぐ前にデータを集約する層を先に作ります。5媒体を統合して毎朝自動で更新する構成は「AIで自作するマーケティングダッシュボードの作り方、広告・GA4・Search Consoleを連携する4つの手順」で手順ごとに整理しています。
広告レポートの自動化を外部に任せる場合の選び方
ここまでの手順は、Google Cloudやサービスアカウント、APIの扱いにある程度慣れた人が、最初の構築に時間を割ける前提のものです。実際には、サービスアカウントの権限設定でつまずく、媒体ごとのAPIの申請で止まる、複数媒体をBigQueryに集約する部分で手が回らない、といった理由で進まないことも少なくありません。日々の運用に追われるなかで、レポート基盤の構築そのものに腰を据えて取り組むのは難しいものです。
外部に任せる場合、頼み方は二つに分かれます。どちらを選ぶかは、レポートの先にある広告運用まで手が足りているかどうかで決まります。
仕組みだけ作ってもらい、運用は自社で回す
広告運用の体制は社内にあり、詰まっているのがレポート基盤の構築だけなら、その部分だけを外部に任せる分担が向いています。一般社団法人日本AI導入支援協会の広告レポート自動化・ダッシュボード構築支援では、いまのレポート業務の棚卸しとKPI設計から始め、広告・GA4・Search Console・CRMといったデータの統合、AIエージェントやBIツールを使った可視化基盤の構築、月次レポートの自動化、AIによるレポート要約や改善コメントの作成までを扱っています。特定のSaaSありきではなく各社の業務に合わせて組むため、自作で目指していた形をそのまま実装まで持っていけます。
レポートを含めて、広告運用ごと任せる
レポートに時間を取られている原因が、そもそも広告運用そのものの人手不足にある場合は、レポートだけ自動化しても手は空きません。配信の設計から日々の調整、成果の報告までをまとめて外に出す方が早く、合同会社efuの広告運用代行はこちらに当たります。どの数字を見て何を判断するかという指標の設計から入るため、レポートは運用の一部として最初から組み込まれます。
すぐに使い始めたい、社内に構築できる人がいないという場合は、媒体をつなぐだけで使えるSaaSツールを契約するのも選択肢です。一方、月額の外部ツールに縛られたくない、レポートの形や考察の出し方を自社の判断軸に合わせて変えたい、という場合は、サービスアカウント直結で自作するか、自社の形に合わせて組んでもらう方が後から効いてきます。
まとめ
広告レポートの自動化は、収集と集計という機械でもできる作業から人を解放し、検証と意思決定に時間を使えるようにする取り組みです。SaaSで媒体をつなぐ道もありますが、AIを前提に自作するなら、サービスアカウントを発行してAIエージェントをデータに直結させる方法を取れるようになりました。Google CloudでAPIを有効にしてサービスアカウントに閲覧権限を与え、MCPで対話的に問い合わせるか、コーディングエージェントに取得処理を書かせるかを用途で選びます。複数媒体はBigQueryやスプレッドシートに集約してから読ませ、権限は読み取り専用にとどめ鍵を厳重に管理するのが安全策です。
土台づくりの知識や時間が足りずつまずく場合は、構築だけを外部に任せて運用は自社で回すか、レポートを含めて広告運用ごと任せるかを選べます。合同会社efuでは広告運用の代行と、成果を判断するための指標・レポート設計を支援しています。いまのレポート業務と広告運用の進め方については、広告運用代行の支援内容からご相談ください。
